オフィスに来訪者が来るから、受付スタッフを配置する。
トランクルームを内見する人がいるから、担当者が鍵を持って立ち会う。
施設を利用する人がいるから、鍵を渡し、利用後に回収する。
一つひとつを見ると当たり前の業務です。
しかし、少し視点を変えてみると、
「その仕事のために、本当に人を配置し続ける必要があるのか?」
という疑問が生まれます。
この「人がいることを前提とした施設運営」を、QRコードを使って変えようとしているのが株式会社KOCHIです。
同社は2021年から、全国のオフィスビルや店舗などを対象にQRコードキーを活用した「Giraffe」シリーズを展開しています。
施設運営の省力化やオフィス業務の効率化に向け、課題のヒアリングや業務フロー整理からシステム構築まで支援しており、年間980万円のコストを90%削減した事例も公開されています。
今回、株式会社KOCHI代表取締役の立林翔氏に、QRコードによる入退館がどのように施設運営を変えるのか聞きました。
今回お話を伺った方

株式会社KOCHI
代表取締役 立林 翔 氏
店舗運営の省力化やオフィス業務の効率化に取り組む株式会社KOCHIの代表取締役。企業ごとの課題をヒアリングし、業務フローの整理からサービス提供、システム構築まで一貫して支援しています。2021年からはQRコードキーを活用した「Giraffe」シリーズを展開。オフィス受付やトランクルーム、無人・省人施設などを対象に、受付や鍵管理のために必要だった人的リソースを減らし、少人数でも運営しやすい仕組みづくりに取り組んでいます。
QRコードを「鍵」にすると何が変わるのか
――Giraffeは、どのような仕組みなのでしょうか?
基本的な仕組みはシンプルです。
利用者や来訪者ごとにQRコードキーを発行し、スマートフォンに表示されたQRコードを入口のリーダーへかざすことで、扉やゲートを解錠します。
特徴的なのは、単に物理鍵をQRコードへ置き換えるだけではないことです。
例えばストレージ向けの「G-storage」では、内見者の情報と有効期限を登録し、QRコードを発行。
そのQRコードをメールやSMSで自動送付し、利用者は指定された有効期限内だけ施設へ入館できます。
契約利用者については、既存の契約管理システムとAPIで利用者情報を連携することもできます。
これまで、
予約を受ける
↓
担当者が現地で待つ
↓
鍵を開ける
↓
内見に立ち会う
という運用だったものを、
予約
↓
QRコード発行・送付
↓
利用者自身がQRをかざす
↓
内見
という形に変えられます。
ここで減るのは、「鍵を開ける数秒」ではありません。
内見のたびにスタッフの時間を確保し、現場へ配置しておく必要そのものです。
トランクルームの「内見に立ち会う」をなくす
――G-storageでは、どのような課題を解決できるのでしょうか?
KOCHIがG-storageで挙げている課題には、
「鍵やカードキーが紛失・未返却になる」
「内見のたびに現場へ人員を割きたくない」
「トランクルーム事業をなるべく低コストで始めたい」
「煩雑な鍵管理を省力化したい」
といったものがあります。
特に興味深いのが、内見対応です。
トランクルームは、契約前に実際の広さや使い勝手を確認したい利用者もいます。
そのために担当者が時間を合わせ、施設を開け、内見に付き添っているとすれば、1件ごとの売上が発生する前から人的コストがかかります。
G-storageでは、内見希望日時を予約した後、期限付きのQRコードを発行して利用者へ送付します。
利用者は指定された時間にQRコードをリーダーへかざして入館し、自分で施設を確認できます。
鍵の受け渡しや現場立ち会いを不要にすることで、スタッフ配置を最小化し、人員コストや運営費を削減できることが特徴です。
つまり、
「内見業務を効率化する」のではなく、「内見のためにスタッフを配置する」という業務設計を変えている。
ここが、この仕組みの面白さです。

「鍵をどう管理するか」ではなく「鍵を配らない」
――この仕組みを使うことによる、副次的な効果はありますか?
はい、カードキー紛失等のセキュリティ対策にもつながります。
物理的な鍵やカードキーを利用する場合には、別の管理業務が発生します。
鍵を準備する。
利用者へ渡す。
郵送する。
返却を確認する。
なくした場合に対応する。
未返却なら督促する。
必要に応じて交換する。
G-storageでは、利用者のスマートフォンにQRコードキーを表示できるため、物理鍵やカードキーを郵送して受け渡す必要がありません。
また、時間を設定したワンタイムQRコードを利用できるため、指定時間外には使えない仕組みをつくれます。
これによって、鍵の紛失・未回収だけでなく、複製や盗難による悪用のリスクの抑制にもつながるのです。
これは、
「鍵管理を効率化する」
からさらに一歩進んだ、
「管理しなければならない物理鍵そのものを減らす」
という考え方です。

オフィスでは「受付に人を置く」を変えられる
――トランクルームだけでなく、さまざまな場所で利活用できそうですね。
その通りです。同じ発想は、オフィス受付にも応用されています。
KOCHIの「G-visitors」は、オフィスビルや工場などへ来訪する取引先、アルバイト、業務委託スタッフなどに、指定時間だけ有効なQRコードを発行する来訪者受付・入館サービスです。
例えば取引先とのアポイントが決まったら、社員が来訪申請を行います。
承認後、QRコードキーを発行し、来訪者へ送付。
来訪者は予定時間になると、そのQRコードを使ってゲートを解錠できます。
この仕組みなら、
- 受付で名前を書く。
- 担当者を呼び出す。
- 入館証を渡す。
- 退出時に回収する。
といった一連の業務を簡略化できます。
G-visitorsによって受付窓口へのスタッフ配置を最小化し、人件費・運営費を削減できる点が特徴です。
こうした受付関連の業務で年間980万円かかっていたコストを90%削減した事例もございます。
受付DXというと、タブレット受付などを思い浮かべるかもしれません。
しかしQRコードで入口そのものまで連携すると、
「受付作業をデジタルにする」のではなく、「受付カウンターを経由しなくても入館できる」
ところまで業務を変えられます。
工場では「全員にICカードを配る」必要がなくなる
――他にも関連性の高い領域でアプローチをかけたい業種はありますか?
この仕組みは、工場や研究施設など、人の出入りが多い施設にも応用できると思っています。
例えば工場には、
- 正社員
- 派遣社員
- アルバイト
- 協力会社
- 設備業者
- 来訪者
など、さまざまな立場の人が出入りします。
特に短期間だけ勤務する人にまでICカードを発行すると、
- 登録
- 配布
- 回収
- 紛失対応
- 無効化
といった管理業務が積み上がります。
G-visitorsではアルバイト、派遣社員、業務委託先なども利用対象として想定されており、来訪時間だけ使えるQRコードキーを発行できます。
「どうやってカード管理を効率化するか」と考えるのではなく、
「短期利用者には、そもそもカードを配らなくてもよいのではないか」
と考える。
小さな違いに見えますが、利用者の入れ替わりが多い現場ほど管理負担は大きく変わります。
無人店舗では「入る」だけでなく、予約から決済までつなぐ
――決済機能までつながるとどの様なことが実現できますか?
Giraffeシリーズのもう一つの展開が「G-service」です。
こちらはQRコードキーだけではなく、店舗・施設の予約受付、入退室管理、利用後の決済までをオンラインで完結させる無人店舗・施設運営サービスです。
例えば、
Webで空き状況を確認して予約
↓
QRコードを取得
↓
施設入口でQRを読み取って入店
↓
利用
↓
退店時にもQRを読み取り利用時間を記録
↓
クレジットカードで自動決済
という流れを構築できます。
対象として想定されているのも、
- シェアオフィス
- コワーキングスペース
- スポーツジム
- ゴルフ練習場
- キャンプ場
- 練習スタジオ
- レンタルスペース
- 貸し会議室
- 貸別荘
- スポーツ施設
など幅広い施設です。
ここまでつながると、
「受付担当者を減らす」だけではなく、スタッフを常駐させなくても成立する店舗・施設をつくる
という話になります。

地方だからこそ「人を置かずに運営できる」が効いてくる
――人口減少に課題を持つ地方ほど価値のあるサービスになりそうですね。
この仕組みは、地方の施設運営にも可能性があります。
例えば人口の多い都市部で、1日に数百人が利用する施設なら、受付スタッフを配置しても採算が取れるかもしれません。
一方、地方では、
1日に利用するのは数組。
週末だけ利用者が増える。
季節によって利用者数が大きく変わる。
という施設もあります。
それでも営業時間中ずっと受付スタッフを置けば、利用者がいない時間にも人件費は発生します。
例えば、
コワーキングスペース
キャンプ場
貸切サウナ
地域のスポーツ施設
レンタルスペース
空き店舗を利用した期間限定店舗
こうした施設で、「受付が必要だから人を置く」のではなく、
「受付に人を置かなくても利用できる施設を最初から設計する」
という発想ができます。
G-serviceは大がかりなハードウェアを前提とせず、QRコードリーダーを中心とするクラウド型の仕組みで、事業規模に合わせて拡張できることも特徴としています。
小さく事業を始めたい地方企業ほど、これは大きな意味と価値を持ちます。
「無人化=セキュリティが弱い」とは限らない
人を配置しない施設で、当然気になるのがセキュリティです。
物理鍵の場合、紛失すると誰が持っているか分からなくなることがあります。
コピーされている可能性もあります。
一方、QRコードキーでは利用時間を設定できます。
例えば、
10月5日13時50分から14時30分まで。
というように利用できる時間を限定できます。
時間が過ぎれば、そのQRコードでは入れません。
さらにG-storageでは警備会社と連携した施工・サービス提供にも対応しており、QRコードリーダーだけでなく電子錠などの機器も合わせて提供しています。
つまり省人化を、
「誰も管理しない状態」
にするのではなく、
人が行っていた確認や制御の一部を、システムへ移す
と考える方が実態に近いでしょう。
本当に重要なのはQRコードではなく「業務を分解すること」
――導入時に重要なのは何でしょうか?
株式会社KOCHIでは、単にシステムを提供するだけではなく、課題のヒアリングや業務フロー整理から支援しています。
ここが非常に重要なポイントなのです。
例えば受付業務を、
- 来訪予約
- 本人確認
- QR発行
- 入館
- 担当者通知
- 施設案内
- 商談
- 退館
というように分解します。
その中で、
- システムに任せられるもの。
- 人が対応した方がよいもの。
- そもそもなくせるもの。
を分けていきます。
「受付スタッフをゼロにする」と最初から決める必要はありません。
来訪受付はQR。
商品説明は人。
緊急対応は人。
通常の入退室記録はシステム。
というハイブリッドでも構いません。
重要なのは、
人を減らすことではなく、人を配置する必要のない仕事を見つけることです。
「人を置けないからできない」を減らせるかもしれない
今回の取材で注目したのは、QRコードという技術そのものではありません。
「受付には受付担当者が必要」
「鍵はスタッフが渡す」
「内見には担当者が立ち会う」
そんな施設運営の常識を、一つずつ疑えることです。
G-storageでは、内見者へ期限付きQRコードを送り、現地立ち会いを減らす。
G-visitorsでは、来訪者が受付窓口を経由せず入館できる。
G-serviceでは、予約から入退室、決済までオンラインにつなぎ、人員配置を抑えた施設運営を可能にする。
この発想を地方へ広げれば、
「受付担当者を雇えないから施設を運営できない」
「内見対応の人員を確保できないから拠点を増やせない」
「利用者が少ないので有人では採算が合わない」
といった理由で諦めていた事業にも、別の選択肢が生まれます。
人が足りない仕事を、どう頑張って回すか。
ではなく、
その仕事に、本当に人を配置する必要があるのか。
と、問いを変えるだけで、解決策も変わります。
株式会社KOCHIのGiraffeシリーズは、QRコードを鍵にする技術以上に、
「人が常駐することを前提にしない施設運営」
という新しい選択肢を提示しているのかもしれません。

企業プロフィール
| 企業名 | 株式会社KOCHI |
|---|---|
| 所在地 | 〒108-0073 東京都港区三田3-9-11 ランドル高輪ゲートウェイ7F |
| 取り組み時期 | 2021年〜現在 |
| 代表者 | 代表取締役 立林 翔 |
| 事業内容 | 店舗・施設運営の省力化、オフィス業務の効率化、システム構築 |
| WEBサイト | https://kochi.jpn.com/ |

